将来の財産?音楽の力と価値を人生に刻もう

ドキュメンタリー映画「パーソナル・ソング」をご存知ですか?
 
この映画。とあるソーシャルワーカーが、認知症アルツハイマー患者に対し、本人が過ごした人生の中で、思い入れのある曲を聞かせていきます。それがどのように忘れ去られた記憶を想起させるのか?この実験を3年に渡って取材したドキュメンタリーです。
 
一例を出すなら、認知症を患った90代のおばあさん。問いに対し、「なにも思い出せない」と言っていたのが、彼女になじみのある、ルイ・アームストロングの「聖者の行進」を聞かせると、目に生気が出始め「これはルイ・アームス トロングね、学生時代を思い出すわ……」と全く思い出せなかった記憶の一部が思い出されるのです。
 
皆さんはこれを聞いてどう思われます?そんなに不思議な事でもない気がしませんか?だって私たちも日常でよく体験しているのですから。

自分と音楽の関わりを考えてみる

私自身の音楽との関わりを考えると、幸いな事に日本の音楽業界が最も盛り上がった1990年代に中学高校時代を過ごし、その後働いたバイト先でも音楽がある環境でしたので、多くの音楽に触れることができました。
 
そのおかげで、当時、聴いていた音楽を聴くと、何時でもその時代に戻ったような懐かしさを感じます。何気なく入ったお店で流れた曲を聴いて感じたこと、皆さんもないですか?
 
そして、それはとても気持ちの良い思い出とリンクします。友達と過ごした日々とか、恋愛とかそんなものですね。時に切なさとかも感じるのですが、思い出したくない記憶と音楽は不思議とリンクしないんですね。切なさもまた良き記憶として高揚感を与えてくれます。
 
音楽によって得られた高揚感。これはオキシトシンセロトニン、エンドルフィンに代表される脳内物質の分泌との相関性が高いとされています。これらには、鎮痛作用もあり、認知症だけでなく慢性痛にも影響すると考えられています。その為、最近は、音楽療法に関する研究も進み、多くの論文もみられるようになりました。音楽療法学会というものも存在していますので今後に注目です。

感性としての音楽と機能としての音楽

こうして考えてみると、若いうちに出会う音楽は感性による”単純に好きな音楽”かもしれないですが、歳を重ねてから聴く音楽は”過去の良き記憶の時代に浸れる”という機能的側面も価値として加わると言えるのではないでしょうか。
 
ですので、若いうちに多くの音楽に触れるのは、将来の財産としてみても、とても素晴らしい事なのかもしれません。そういった意味で日本の音楽業界には頑張って頂きたいですし、海外、ジャンルなどに捉われず音楽を楽しむことも大切だと考えています。
 
少し飛躍した話ですが、これによって今まで以上に音楽に関する研究が進み、介護保険利用時のケアプランなどで好きな音楽や好きな歌手などの項目が増える事を期待しています。だって、音楽はそれを聴いた人に刻まれ、価値を生み、大きな力に変えてくれるのですから。